2024/01/10 00:00
今から20年前の2004年にリリースされ、累計販売本数1万セットの大ヒットを記録した「俺がハマーだ! コンプリートDVD-BOX」「新・俺がハマーだ! コンプリートDVD-BOX」。そのブックレット制作に熱い筆を振るった翻訳家・映画評論家の品川四郎さんが、蔵出し写真と蔵出しエピソードを綴る特別寄稿第3弾。今回が最終回となります!
■「新ハマ」尋ね人:C・Mさん(元メディアリング在籍)
●『究極超人あ~る』のR・田中一郎クンの半目をぱっちり目にすると、C・Mという人に瓜二つになります。あの細身のシルエットなんかホントにそっくりなんですから(いや誰もそんなこと知りたくないって)。思わず首が取れるんじゃないかと心配したり(いや、だから!)。冗談はさておき、もし「俺ハマ」の日本版現象にあずかって功のあった皆さま諸氏が言い出しっぺ、発起人、高祖李淵であったとするなら、C・Mさんこそは拡大スピーカーあるいは太宗李世民、このバカ騒ぎを無意味にでっかくした張本人なんであります。
●C・Mさんはもともと東北新社の人。新社が無数の外国映画ビデオを作って各社に卸し販売していた当時、そのジャケットの裏側に解説を載せるという風習がありました。かつての虫コミックスのカバーですかね、裏側に印刷なんて(もう誰も分からないでしょう、たぶん)。品川もその執筆苦力(クーリー)の一人でありまして、後半のころに品川の担当になったのがC・Mさん。与えられるのは、ほとんどがB級C級の未公開作品ばかりでしたが、中には『クレムリンの赤いバラ/鉄のカーテンの向こうの懲りない人々』なんてのもありまして、ちょっとは見られる佳作でした(ただし品川解説はリキを入れ過ぎていてつまらない)。
●そんな彼がのちに移籍というか転職というか、机を変えたのがメディアリングという会社。これは三菱樹脂というおカタい会社がどうした風の吹きまわしか、1989年、レーザーディスク事業に乗り出すために立ち上げた会社(ちと遅くないかい?)。結局は当時のゲームソフトが中心となるものの、C・MさんはOVA『しあわせのかたち』とか変なものをうれしそうにやっていて、当然のように「新ハマ」も彼のテイストに合致します。今回も吹替オンリー、台本も演出もスタジオもすべて変わりますが声優陣はすべて踏襲、それで前作「俺ハマ」とまったく同じかそれ以上のおバカぶり、こういうのは「はなれわざ」なんではないでしょうか(誰も敢えて言わないけど)。不埒なデザインのVHSジャケット見本やLDのチラシやポスター、遊びに行くたびに、いつも楽しげに資料を渡されるんですが、当時は品川は(言わずと知れた)野暮用に忙しく、うわの空で聞いていたのが大変申し訳なく、この場を借りてお詫びする次第です。
●なればこそ、奇縁というか因縁というか、DVD-BOXの仕事に関わることになった際には、ぜひにも当時の話を蒸し返して――いやうかがうべく、八方手を尽くして消息を探ったんですが、これが杳(よう)として行方知れず。C・Mさま、あなたはどこに消えてしまわれたのでしょうか。「俺ハマ」から「新ハマ」への架け橋となったC・Mさん、まるでかつての映画『リング』と『らせん』を見事につないだ松重豊さんみたいですが、その貴重な談話掲載がままならなかったため、当時のブックレットには失礼無断を承知で「C・Mワークス」とも言いうる過激な「新ハマ」デザインの一端を見開きで特集させていただきました。
●その後、C・Mさんからは「LDの帯の裏の推薦文を書いてくれません?」という唐突な依頼が最後のお付き合いとなりました。もちろん快諾して渡されたのが『贖われた7ポンドの死体』(!)。それはそれはシブい名作で監督フレディ・フランシス、主演ティモシー・ダルトン、ジョナサン・プライス、ジュリアン・サンズにツイッギー! 医者と死体と解剖学という、これでも医者の孫に当たる品川のためにあるような映画。舌なめずりをしながら書かせていただいたことは言うまでもありません。おっと閑話休題、そんなこんなで「新ハマ」にも、押井守監督に気に入られて雀卓を囲むのにも忙しかったC・Mさん。いまからでも遅くはありませんから、ご本人様はもちろん、どなたか所在をご存じの方がいらっしゃいましたら、ぜひにもご一報をいただきたく、よろしくお願い申し上げる次第です。
【写真09】
『新ハマ』VHS全6巻。前半3巻に見られる赤い帯のようなものはステッカー。わざわざジャケットと一緒に挟み込んで出荷されました。はたしてこれは宣材なのか、それとも単なるオマケなのか。この辺も、いかにもC・Mさんらしいテイストですねえ。
【写真10】
当時、品川が預かった「新ハマ」資料の一部。C・Mさん手書きのVHSデータも懐かしい。そうなんです、C・Mさんはきれいなオトコ丸文字を書く人でした。もっともっと協力してあげればよかった。本当に申し訳ありません。
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